週明けです。【2015/12/07】 

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 おはようございます。今週も宜しくお願いします。天気予報によると今週は暖かいということですが、丘の横浜はお寒うございます。この辺りは都心部に比べ概ね−2度ほど気温が低い傾向にあり北関東並かもしれません。暦でも「大雪」ですので、寒くて当たり前なのですが。

今年は85台で打ち止め

 HL-350Vdxは早ければ本日出場予定、年内のアマチュア無線機関連の修理はこれで終了させて頂きます。来年は10日頃から作業を再開致しますが、予約・相談は受け付けておりますので、TBHDのアマチュア無線機修理受付フォームからお送り下さい。また、年明け以降の作業分に関しましては、25日以降にお送り頂ければ幸いです。

 今年からお仕事として「アマチュア無線機修理」を始めました。以前はローカルからの紹介のみ、細々とお受けしておりましたが、こんなにも沢山の方々が古い無線機への拘りをお持ちになっていることに、正直驚いています。“新スプリアス問題”が取り沙汰される中、旧型機はメーカーのサポート対象外になるケースが多く、また倒産してしまったメーカーについては、これまた如何ともし難い状況。そんな“行き場を失った無線機達”の多くは、直せばまだ暫く使える個体が多いのも事実です。また、1200MHz帯や衛星通信機能を搭載した機種など、メーカーが新機種を投入しないカテゴリーに関しては、修理できない場合「撤退」を余儀なくされます。実際にラボに持ち込まれる無線機の多くはこれらに該当します。

メーカーを擁護するわけではありませんが・・・

 無線を聴いていると「メーカーは新型機を売りたいから古い機械は直さないんだ!」「技術力が低下しているんじゃないか?」などのご意見が聞こえてきます。メーカーは購買部門を通じて部材調達を行いますから、新機種を生産ラインに入れる際、補修用性能部品を含めデバイスの調達を一括で行います。家電製品の場合は製造打切から8年間は部材をストックしており、アマチュア無線機器メーカーもこれに習っていると思われます。これらは資産計上されるもの、消耗品扱いになるものなど、事情は異なりますが、概して保管管理が困難になるケースが多く、新機種投入と共に一定年数が経過した補修用性能部品は廃棄せざるを得ない事情もあるのです。また、一部のメーカー・サービスを除き、修理担当エンジニアに個人裁量権が無いため、デバイス・ベンダーやサプライヤーから小ロットで部材を調達できないなどの事情もあるでしょう。更に修理部材の多くはディスコン(discontinuedの略)、即ち廃番品になっているケースも多く、デバイス・メーカーやサプライヤーからの入手が困難だったり、「ロット補充品」などの場合は数年に一度しか生産しないパーツや、100個以上のオーダーが入らないと生産しないものなど、供給可能な部品であっても、要求される修理コストに見合わないことも多々ございます。

 しかし、これは日本での話です。アマチュア無線機器の多くは海外にも輸出されており、補修用部品も一緒に提供されています。同様にデバイス自体も海外に流通在庫しているケースが多々あり、国内で入手困難な半導体やディスコン・パーツも入手可能です。考えてみれば、日本国内の市場規模とは比較にならないマーケットが世界に拡がっているわけですから当たり前の話です。性能の善し悪しはありますが、三菱・東芝・NECなどのトランジスタも中国製のライセンス品が存在する時代です。デリバリーも小ロットから受け付けてくれるので、コスト的な条件さえ見合えば修理可能になる無線機が増えます。また、真空管の場合は逆に流通量が豊富です。苦労するのは大容量の電解コンデンサーでしょう。こちらは耐圧・容量が同一でもケース形状が異なるとシャーシにマウント出来ないなど、簡単にリプレイスがきかない事が・・。しかも経年劣化しやすい部品なので「新品未使用」はあてになりません。

レストアより修繕を優先

 などなど、色んな事情が交錯する無線機修理でございます。ヴィンテージ・リグの多くは、“オリジナル製品への価値”に拘りを持たれるオーナーも多く、フル・レストアを求められる場合も多い様です。FT-101などのレストアを専業にされているファクトリーでは、ネジまでもオリジナルで生産されるという力の入れようです。そこまで拘りを持って蘇らせた無線機はもはや家宝でしょう。1台レストアするのに半年費やし20万掛かったという話も聞きます。それもアリだと思いますが、小生はレストアよりも「使用可能な状態への修繕」を優先します。使用可能とは諸般の事情に適ったという意味を含んでいます。

 RJX-601という無線機は小生の無線機修理の原点とも言うべきモデルですが、50MHz帯(50.000MHz〜54.000MHz)をフルカバーするFM/AMの可搬機です。同調回路はワイドな帯域特性に合わせて設計されており、中心周波数の52MHz基準でチューニングする様、サービスマニュアルには書かれています。RJX-601が世に出た45年前と現在ではバンドプランも大きくことなり、52MHz以上の周波数を使う機会は殆どありません。むしろ、51MHzを基準に調整したほうが現実に即しています。当然上の周波数はスカスカになりますが、帯域を狭めて調整したほうがスプリアス的にも効率的にも優位です。また、50.000MHzのキャリブレーターも使いにくく、50.500MHz〜51.000MHzの何処かに設定した方が、使い勝手は向上します。つまり、使える機械にすることを前提にメンテナンスすることを優先すべきと考えています。せっかく修理しても、使わなければ劣化は進行します。機械の維持にとって重要なのは「使うこと」です。

打率9割維持が目標!!

 今年修理の依頼でお預かりした数は90台です。これらの内、故障原因が特定できても修理コストが見合わなかったり、代替部品調達の問題から修理を断念した個体は5 台のみです。かなり頑張った数字だと思っています。

 中でも厄介なのは安定化電源かもしれません。と言うのは、修理するより新品を購入した方がお得な場合が多いように思うからです。30Aクラスの電源でも2万円程度で買えます。ところが修理となると、安定化電源は意外にも工数が嵩みます。分解修理に手間が掛かることも多く、実は修理を断念した5台の内3台が安定化電源でした。実際に無線機修理でも誘導雷(サージ)被害で破壊された箇所は殆どが電源周辺で、これらの修理には非常に多くの工数を費やします。メーカーでも修理拒絶品のナンバーワンは落雷被害でしょう。結局これらを受注してしまうとラインが塞がってしまい、他の作業が滞ってしまうのと、メーカーサービスの場合は特に「工数に見合った作業工賃を請求できない為」だと思われます。ユーザーにとっても新品代替を購入した方がお得かもしれません。確かに50Aや60Aの電源は確かに貴重です。リニアアンプ等には欠かせません。しかし、修理代に4万以上掛かるなら、30Aクラスの越流制限機能付きのインバータ電源を並列運転させた方が、使い回しも効いてオススメです。そのまま並列に繋ぐのは具合が悪いので、サージ対策用のバリスタとコンデンサを組み合わせれば簡単に並列運転できます。工業用の安定化電源の場合、並列運転を前提に設計されているものも多く、実際に開発環境ではその様な使い方がされています。ヤフオクあたりでも、アマチュア無線用に並んで測定器ブランドの電源が比較的安価に出品されているので、チェックするのも宜しいかと思います。

 また、劣化箇所が多岐にわたる機械の修理もお断りするケースがございました。喫煙環境に長く置かれた機器は内部にまでヤニが浸透し複数箇所で接触不良を起こしています。更に海沿いの地域で使用されたと思われる個体は塩害による錆腐食が進行し、全く手がつけられませんでした。この様な個体は故障の連鎖を引き起こす可能性が高く、修理の為の分解作業が他の箇所の故障を誘発するリスクがあり、正直なところお引き受けすることが困難です。それと、とんでもない魔改造を施された機材も・・・。アマチュアですから改造はアリだと思います。実際にメーカーサービスが改造を施す場合もあるので一概に否定はしません。ただし修理の際はオリジナルの回路図やサービスマニュアルに頼って作業しますから、図面に存在しない部品や異なる機能を実装されている場合、それが改造によるものなのか、リビジョンの違いによるものかについて判断に苦慮します。具体的な改造箇所と方法(出来れば改造回路図の添付)をお願いしたく存じます。

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