FT-625D ご出場 / HL-130Usx ご出場 / RJX-601 ご出場【2020/07/10】
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お疲れ様です。南関東の雨は小康状態。九州・東海に重大な被害が出ています。被災された方には心よりお見舞い申し上げます。12日まで続くとのことです。
YouTubeのコメント欄に“修理してくれ〜〜”メッセージを度々頂戴しています。会社のホームページからご相談頂ければ幸いです。因みに、只今150台待ちです。そろそろ年内の受付を終了しなければなりません。未だかつて経験したことのない忙しさです。今日も時間が無いので与太話抜き本題に入ります。
FT-625D ご出場
大変長らくお待たせしました。大重篤状態からの復活であります。こちらは、周波数カウンターが点滅し送受とも全く機能しない状態でお預かりしました。PLL機ならアンロック??を疑うところですが、本機はVFOに直読の周波数カウンターを付加したFT-625D(当時周波数カウンター付きのモデルには“D”が付いた)であります。VFO+局発信号を50.0000MHz〜54.9999MHzにプリスケールされたカウンター部に読み込む事で周波数を表示させる仕組みですが、周波数範囲を逸脱すると50.0000MHzを表示点滅します。本機はこの点滅状態でした。ところが固定チャンネル(水晶実装)に切り替えると周波数が出ます。ローカルミックスの波形を確認したところVFOから信号が来ていません。本機は配線がカオス状態のため、どこで寸断しているか全く検討もつかないためVFO本体を分解してみました。すると電源が来ていないことが判明、DC8Vを追って行くと途中で断線している箇所を発見、繋ぎ直してVFO自体は発振するようになったのですが混合段の信号が依然弱いです。(殆ど出てこない)FIXユニット内のローカルバッファ(VFO信号はFIXチャンネルの信号とスイッチされるためココを通過する)が不動でした。トランジスタとケミコンを交換したところ、正常な波形が出る様になりました。
この時点で受信動作に関しては概ね正常化されましたが、カウンターの表示周波数と実周波数がかなりズレています。特にUSB/CW側では7KHzもズレています。LSB/AM/FMは校正範囲でしたが、USB/CWは頑張っても5KHzまでしか詰まりませんでした。どうやらUSB/CWを受け持つ水晶が劣化離調しているようです。水晶は特注となるため、今回はコンデンサの定数変更に加え、水晶に直列にコンデンサを挿入することで発振周波数を校正可能範囲に移動させました。
この状態で送信チェックです。出力が5Wしか出ません。しかも、どんどん小さくなって行きます。明らかにおかしな挙動ですね。電圧をチェックしたところ、DC13.7V(本機の定格電圧)が20V以上出ています。本機は電源内蔵のためAC100Vで動作しますが、定電圧回路の故障でしょうか・・・。調べて行くと、リアパネルに付いている定電圧用のパワートランジスタのコレクト=エミッタが両極でフル導通、ブリッジ出力がそのまま流れ出ていた様です。そうなると、DCラインの故障はかなり広範囲に及んでいる可能性が否めません。
本機の2SC2099(プッシュプル)はVCE=40V、VCEO=18Vです。20V以上のVCCで増幅動作さえれば壊れますね。Pc自体は60Wと高めなんですけど、ケースが小さいので半導体の絶縁限界が低いのでしょう。2SC2099のMP品は入手できないため、正規品の同ロット4個を調達し、hfeを測定して特性の近い石を選別することにしました。(結果的に4個ともhfeは揃っていた)この際、PAに焼損炭化した部品を発見しました。タンタルコンデンサです。タンタルは温度特性に優れるため、熱源近くの回路に使われることが多いのですが、耐圧を超えるとすぐに壊れます。しかもケミコンと異なり、容量変化→液漏れ→破裂・DCリークという過程を踏まず、いきなりショートします。PAに搭載されているタンタル全数(焼損を除く)が短絡していた様です。これを通常型の105度耐圧のケミコンに交換しました。
予定工数を遥かに超えましたが、何とか使用可能状態となりました。送受のIFトラッキングを実施、出力はAM/FMで10W。CWで18W、SSBではピーク40W出ています。本機は送信系を強要する海外版のFT-625RDと同一の高周波回路構成ですが、そもそも2SC2099に余裕があるため、海外版では25Wに設定されていました。全て規定通りに調整した結果、本機はUSBピークで40W出る様になりました。2SC2099のデータを見る限り25W時のIMDは-30dBと記載されています。この時点で新スプリアス的にアウトです。後ろにフィルタでも付ければ別ですが、このままピークパワーで運用してしうのは免許云々に関係無く違反行為です。Poゲインを下げてピーク20W程度でお使い頂く事をお奨めします。受信については絶好調です。測定限界の-140dBmでしっかり復調できました。
【ご依頼内容】
- 周波数カウンター不動
- 送受不能
以上について修理を承りました。
【工数】
上記作業に工数7.0を要しました。(故障箇所特定、調達、交換、改造、修復、調整、検証、起票、荷解き・梱包・発想、その他を含む)
【交換部品・使用ケミカル剤など】
- ファイナルトランジスタ×2
- 小電力トランジスタ×2
- 抵抗×2
- 中容量ケミコン×2
- 小容量タンタルコン×3(ケミコン代替)
- セラミックコン×1
- 放熱用シリコン 少量
- レジストコート 少量
- エタノール 少量
- CAIG デオキシット D5
- CAIG デオキシット D100L
- シリコンスプレー 少量
HL-130Usx ご出場
こちらもお待たせしました。電源を入れると受信感度が低下してしまうリニアアンプとのことでした。調べましたところ、電源OFFだとスルーで送受信可能です。ところが電源を入れると送信増幅するものの、受信はまったくNGです。強制STBY状態になっている模様。原因はキャリコンICの故障でした。このICはキャリアセンス、オープンコレクタまたは+DCによる強制STBYと送信時プリアンプ回路OFFの機能を備えたキャリコン回路を内蔵しているTHP内製のパーツです。従いまして、現時点で調達は不可能です。そなると修理方法一つしかありません。このICと同等の機能を持つ回路を設計するしかありません。恐らくこのICも基板上にチップ抵抗を並べて上から被せただけのものでしょう。回路設計は一緒なのでICを造ることは可能ですけど、コストを考慮してディスクリートで組むことにしました。トランジスタ5石の回路です。基板は懐かしいFCZのトランジスタ基板です。こういう作業の時には実に重宝します。トランジスタはNPNをキャリアゲートとして、PNPをリレー代わりに使います。リレー代わりなので2A程度は発熱せずに流せる石が良いです。2SA966で行くことにしました。実装場所は本体基板と制御基板の間にある唯一の空きスペースです。本体の回路を使う為、制約があるため、STBYから受信への切替はキャリアセンス時に受信ディレイが介入します。の変わり、リグのACC 端子にSTBYケーブルを繋げばFM側で瞬断可能名様にしました。オープンコレクタ・+DCともに使用可能です。故障箇所以外についての詳細は不明ですが、送受共に正常に動作することを確認しました。
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【ご依頼内容】
- 電源ON時に受信不能になる
以上について修理を承りました。
【工数】
上記作業に工数5.0を要しました。(故障箇所特定、回路設計、調達、交換、改造、調整、検証、起票、荷解き・梱包・発想、その他を含む)
【交換部品・使用ケミカル剤など】
- 小電力トランジスタ×5
- 抵抗×5
- 中容量ケミコン×1
- スチロールコン×1
- 熱収縮チューブ 20cm
- フラットケーブル(8P)
- FCZ トランジスタ基板 ×1
- アルミットハンダ 少量
- ベルクロテープ
RJX-601 ご出場
今回の作業からRJX-601はAMEさんが担当することになりました。諸々のポイントを伝授していますので仕上がりは小生の作業とかわりないです。初期型の後期ロットの美しい個体です。今回はメンテナンスパック+照明LED化のオーダーです。毎度の定番作業となりますので、詳細レポは割愛させて頂きます。小キズが気になったので、タッチアップしておきました。後ほど写真を掲載します。
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【ご依頼内容】
- メンテナンスパック
- 照明LED化改造
以上について作業を承りました。
【工数】
メンテナンスパック規程工数+工数1.0(故障箇所診断、調達、交換、修復、調整、検証、起票、荷解き・梱包・発送、その他を含む)
【交換部品・使用ケミカル剤など】
- メンテナンスパック規程部品(内容省略)
- 白色超高輝度LED ×2
- 減流抵抗器 ×2
- 光軸拡散フィルム ×2
- CAIG デオキシット D5 少量
- シリコンスプレー 少量
重篤3台+回路設計施工案件で1週間費やしました。これからIC-703の検査に入ります。一週間遅れの作業になっていますが、どうかご理解ください。(6/29 入場案件) コロナが再び増え始めています。皆さま呉々もご注意下さい。
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