TS-930 ご入場中 / IC-726 ご出場【2019/12/13】
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お疲れ様です。一段と冷え込みが厳しくなった横浜です。いよいよ年の瀬が迫ってきました。ラボワークも一年で最も忙しいシーズンであります。
Twitterに少し呟いたNano VNAについてです。実は数ヶ月前にAmazonで買って放置していました。今更説明は不要かと思いますが、ハンドヘルドのベクトル・ネットワークアナライザです。昨今は中国製のナンチャって測定器が巷に溢れていますが、その中でも最大のコスパです。“ネットワークアナライザ”とは信号源と検波部を合わせ持つ高周波計測器なんですけど、TG付きのスペアナみたいなもので、それに特化した測定器と言えば良いかな? ラボにも“リース流れ”の旧式スカラ・ネットワークアナライザ(SNA)が鎮座しています。最近はベクトル・ネットワークアナライザ(VNA)というエネルギーと位相を同時に観測できるタイプが主流になってきました。これは全ての測定器に言えることですが、図体が大きくラックマウントして使う為、被験個体を側に置いて作業する必要があり、工場のように特定のパラメータだけを反復して使用する環境なら良いのですが、我々修理屋の様に日々違うメーカーの異なる機械をメンテナンスするエンジニアは、その都度パラメータの入力を迫られるため、測定器と被験品の行って来いを繰り返すことになります。昨今の測定器はハンドヘルドタイプが主流となりつつあり、テスターの様に手元で作業できるものが増えました。やはりスペアナやVNAも携帯型が重宝します。開発環境など高度な計測が必要なシーンには不向きですけど、思いついたときにサッと取りだして使えるという点に於いては、ハンドヘルド型は大きなバリューを感じます。何と言っても6,000円という値段が衝撃的! そして起動時間は3秒程度!!。そもそも校正落ちした中古のネトアナよりマシです。唯一の欠点はLCDのサイズが小さいことでしょうか。正直なところ、スミスチャートの上に4つの測定項目が重なると子供の落書きにしか見えません。汗 しかしマニュアルをよく読むと自分仕様にカスタマイズできる事が解りました。しかも狭い範囲を観ることもできるのでフィルタカーブの確認にはもってこい。プローブケーブルの長さも短くてすみます。

アマチュアの多くはアンテナ・アナライザとして活用されているみたいですね。小生にはこコレを持ってタワーに上がって”なんてことは想像できませんョ。笑 どう考えてもヤバすぎ! アンテナ・アナライザとしては Rig ExpertのAA-100辺りと同等の機能を有することになるのですが、専用設計された製品と比較してはダメ! AA-54を10年以上愛用していますが、この製品はUIが秀逸だと思っています。シリコン樹脂のケースはとても頑丈で少し落としたくらいでは壊れません。AA-54は片手で作業できます。実はLCD自体のサイズはNanoVNAの方が大きいし、解像度も高いです。しかし、こちらは屋外で使用することを前提としていません。タッチパネルの操作を指でやるのは難しく、指の太い人はタブレットペンが必要です。そんなわけで、外でアンテナ調整に使うなら俄然アンテナ・アナライザの方が便利でしょう。因みにLCDの暗さについてですが、室内で作業するなら丁度良い感じです。屋外だと少々見えにくいかもしれません。スミスチャートを読むのは至難の業?
ところで、50KHz〜900MHzと書きましたが、ファームの書き換えで1500MHzまで拡大できる様ですね。300MHz〜900MHzは3次高調波を使っているとのことで、それ以上の周波数は5次高調波になるのか?? かなり精度が落ちそうです。殆どHF機のBPF調整に使用しているのでこの性能で十分かな・・。NanoVNAはハンドヘルドPC用のデバイスを組み合わせて上手に設計されており、バッテリーもドローンなどに使われる汎用品です。あり合わせの物を上手く組み合わせて造っているからこそ安く仕上がっています。Raspberry Piみたいに複数のメーカーが造っているのでパーツの善し悪しもあったりするのかもしれません。トラ技の記事が増えることを願っています。測定途中に突然バッテリー切れになるのが玉に瑕(爆)。USBアダプタで充電できます。以下にAmazonのリンクを貼っておきます。値段は6,000円〜7,000円くらいで、メーカーによって付属品の有無がある様です。もう一台買っておこうかな。
参考文献:https://cho45.github.io/NanoVNA-manual/#nanovna(別ウインドウが開きます)
TS-930 ご入場中
電源ユニットの修理が終わりました。2200µFのブロックコンから電解溶液が漏れ出でいました。基板に腐食もなく、定電圧回路の入力側と出力側が短絡している形跡もありません。ケミコンのDCリークが原因だった様です。交換後、照明用電源ラインの電圧も正常に戻りました。LEDを交換しメーター照明が復活しました。フロントエンドの2SK125も交換、真横のケミコンが肥大しています。44MHZのトラップコイルを回すと盛大に発振しました。このケミコンが悪さしている様です。交換したところ発振が止まりました。只今AGCの修理に掛かっているところです。NanoVNAでフロントエンド手前のBPFもバッチリ調整しました。かなりズレていたので、感度回復が期待できますョ。週明け出場を目指します。少々お待ち下さい。
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IC-726 ご出場
こちらはニコイチ作業でした。以前「修理不可」でお戻した個体です。常連オーナー様からのご依頼ですが、本個体への愛着からドナー個体をご用意頂いての再入場であります。送受不能なバンドがあったり、SSB送信不可のバンドがあったり・・・。PLL動作不良とメインユニットの制御不良を併発し、工数超過が主な要因であったと記憶しています。修理個体は100W機ですが、ドナー機はIC-726S(10W機)になります。外装などは修理個体の方が状態が優れていますし、作業効率的にも100W機をベースとした方が好都合です。PLLとメインユニットをそっくり移植した後、全項目をフル調整しています。また、ドナー機にはトーンエンコーダユニットが装着されていたので、そのまま移植しました。施工後注意すべき点はキチンとALCを調整しなければならない点です。10W機はほぼALCが開放されているので、載せ替えただけだとエラいパワーが出ていまいます。せっかく修理しても貴重なファイナルを壊してしまっては元も子もありません。規程値+10%程度に調整しました。ご提供頂いたドナー個体からの移植になるため動作保証はできませんが、一通り正常に動作することを確認しています。受信については動画をご覧ください。
(1)PLL Assy交換により、PLLユニットの全アライメント調整を行いました。
(2)ドナー個体に”トーンエンコーダAssy”が装着されていましたので、こちらも移植しました。
(3)MAINユニットにも不具合があり、ドナー個体から移植交換しました。
(4)これを実施後、ALC等10W機とことなる箇所の再調整を実施しました。
(5)総合調整を実施しました。
(6)取り外した故障Assyはドナー個体に組み込みました。
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【ご依頼内容】
SSB送信不可のバンドがある 10MHz以下のバンド
送受信不可能なバンドがある 18MHz以上
その他 総合調整
【工数】
上記作業に工数3.0人日を要しました。(故障箇所特定、ドナー個体診断、Assy 組換え、PLL調整、総合調整、検証、報告書作成、その他作業を含む)
【交換部品・使用ケミカル剤など】
- PLL UNIT Assy (ご提供部品使用)
- MAIN UNIT Assy (ご提供部品使用)
- トーンエンコーダ オプション (ご提供部品使用)
今日はHX-650とTS-930をパラレル作業中です。皆様良い週末をお過ごし下さい!m(_ _)m
- Aperture: ƒ/1.8
- Camera: iPhone 8 Plus
- Focal length: 3.99mm
- ISO: 100
- Shutter speed: 1/17s