FT-757GX・FT-1000・FL-7000・TS-520x 全てご出場【2017/12/01】
by
Le Bar Chanpagne Tiny Bubbles であります。そして、週明けは再び福岡出張。そんな中、大型機のご入場が相次いでおり、全ラインともエンジン全開で対応致しました。
力仕事の連続でありましたが、何とかラインナップした全ての機材をC/Oできましたので、急ぎ足でご報告したいと思います。
ft-757gx ・・故障は電源ラインだけではなかった

「電源が入らなくなった」とのことでした。専用電源FP-757を接続しパワーONすると電源が瞬断します。原因はドライバのショートです。プッシュプルですので、故障原因にもよりますが、大概の場合は二個一緒に壊れてしまいます。まず、こちらを交換しました。パワートランジスタを外した状態で電源投入を確認していた為、これで修理完了と思っていたのが甘かった・・・。組み戻した後に始めてマイクを接続、PTT押したところ送信状態に切り替わりません。手を入れたPAユニットにはPTTや受信ミュートなど、SEND/STBYに絡む回路が集まっています。“ジャンパ・コネクタでも付け忘れた?”のかと思いきや、PTTアクション(GND短絡)を+電位トリガに変換するロジックICが逝かれていました。確認方法は至って単純、入力ピンのON/OFFに対して出力ピンのOFF/ONをチェックするだけです。使用されているICはお馴染みのMC14011Bで、CMOSタイプのNAND GATEです。内蔵される3個の否定論理積回路がシリースに繫がっており、途中にGND短絡でミュートされる受信回路へのトリガーラインが繋がり、最終段で+電位を発生させ2石のトランジスタSW(PNP-NPN)で送信系統の13.8VをON/OFFします。PNPのベースをGND短絡させるとコレクタ〜エミッタが流れ出し、TX状態になりました。また、ロジック2段目の受信ミュートもGND短絡でスピーカーからのホワイトノイズが消えました。ということで、IC故障は間違い在りません。CMOSですので壊れやすい部品です。ドライバ段が真横にありますので、こちらの故障時に何らかの影響を受けた可能性が否めません。“無線機本体の電源SWを操作せずにFP-757側でON/OFFしたら壊れた”とカルテに記載されています。インバーター電源ですので、何らかのパルスが飛び込んだ可能性は否定できませんが、あまり聞いたことの無いトラブルです。
送信可能状態に戻った個体でありますが、RFゲイン最大なのにSメーターが落ちてきません。調整範囲も超えてしまっています。AGCの基準電圧となる定電圧回路が短絡していました。こちらは、DCライン上のケミコン数個を交換し正常復旧しました。
![]() |
![]() |
【ご依頼内容】
- 電源が入らない
- Sメーター振り切れ 受信出来ない
- その他
【総工数】
5.5人日
【交換部品】
- 2SC2395 ×2
- タンタルコン ×1
- アルミ電解コンデンサ×5
- MC14011B CMOS NAND GATE
ft-1000 AFアンプ故障
故障箇所特定に至る経緯については既に前号でご報告している通りです。TD2003VとVDDを供給するトランジスタSW一個を交換しています。TD2003が故障する際に一緒に故障してしまう箇所ですね〜。もしかすると、トランジスタSWが先に壊れるのではないかと思われます。恐らくパワーオペアンプの保護回路を兼ねていると思われますが、何れも交換しました。周辺のケミコンも一部に容量抜けを確認したため、予防も兼ねて周囲のケミコンを交換しました。
![]() |
![]() |
【ご依頼内容】
- AF オーディオ歪み
以上について修理・作業を承りました
【総工数】
2.0人日
【交換部品】
- TD2003V ×1
- 2SD667の代替として、2SC468D×1
- 470μF/25V アルミ電解コンデンサ ×1
- 100μ/16V アルミ電解コンデンサ ×1
- 結束バンド(ショート)×5
fl-7000 18MHz/21MHz 使用できず
大型のソリッドステートリニアアンプです。当ラボではお馴染みの型式であります。見出し通りの症状でありますが、LPFユニット内高圧マイカの故障を疑いました。ココは後ろのチューナーの調子が悪いと壊れる場所です。耐圧1Kvw規格の高耐圧コンデンサーですが、500Wを超える出力でハイ・インピーダンスとなった場合、耐圧を超える電圧となると思われます。LPFユニットを筐体から着脱し、基板部分を抜き取ります。18MHz/21MHzを受け持つ回路は共通となっており、入出力リレーで括られる部分の確認となりますが、完全に短絡しているため、コンデンサ全ての抜き取りを実施することとなりました。入力側から一つずつ半田を吸い取ってマイカコンを着脱してゆきます。3番目のマイカコンがヒットしました。他は大丈夫そうです。150pF/1Kwvを同容量の3Kv耐圧のセラコンに交換しました。
次はメーター照明の交換です。この作業、意外に手間が掛かります。と言うのは、本機のメーター照明はメーター内部に電球が仕込まれている為、メーター自体を分解しなければなりません。使用されている電球は細長い12V耐圧の電球ですが、これが入手困難です。逆に12V耐圧の麦球では球が小さすぎて輝度不足となります。3mm径の超高輝度白色LEDを使用することにしました。通常の麦球リプレイスには径が大きすぎるため使用できませんが、本機のメーターは厚みがあるためコレが使用できます。減流抵抗と共に拡散フィルムを装着のうえ、仕込むことにしました。
ご依頼にはございませんが、その他として、MANUAL スイッチのLEDが点灯しません。機能故障はなく単なるLED球切れでした。残念ながらこちらも部品はありません。フロントパネルに突起部を差し込む対応ですが、代替の角形LED先端は尖っていないため、パネルに近づけることで機能回復させました。また、本機はヒートシンクや冷却ファン、LPF、チューナー機構部分を埃が覆い尽くしていました。結露して水滴が溜まると確実にショートします。乾燥時には火災に陥ることも危惧されましたので、内部の清掃を実施しました。因みに、14MHz以上でチューナー動作が鈍くなっています。原因はバリコン駆動部のモーター動作の鈍りによるものです。特にハイバンド側ではタイムアウトになる傾向が多く、18MHz/21MHzのマイカコンが故障した要因もココにあると思われます。モーターは入手困難なため、交換による修理は困難です。(ローバンドはバリコン可動範囲が異なるため、今のところ使用できます)
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
【ご依頼内容】
- 18/21MHzg使用できない
- メーターランプ切れ
- その他 1
- その他 2
以上について、修理を承りました。
【工数】
3.7人日
【交換部品等】
- 高圧マイカコンデンサ(1kv) の代替として、高圧セラミックコンデンサ (3kV)に交換
- 超高輝度LED×2
- 1/4W抵抗器×2
- 拡散フイルム×2
- 緑色LED×1
ts-520x(改造機)について
こちら作業を続けておりましたが、工数カットのご指示を頂きましたため、途中ではありますがC/Oとさせて頂きました。総合点検のご依頼だったのですが、この年代の機種となりますと、どうしても4〜5人日は掛かります。総合点検はサービス・プロシジュア通りの点検・調整をベースとしていますが、点検の仮定で着脱や内部清掃・接点洗浄などの作業が必ず含ます。その為、機器の診断だけで2人日以上を要してしまいます。そこから不具合部分の修理となりますため、上記の様な工数が掛かってしまいます。特に本機はコネクタを使用しないラッピング接続を多用しているため基板着脱にも非常に手間が掛かります。今回はALC不調とのご相談でしたが、こちらの調整は真空管が正常動作していることが不可欠です。本機のドライバ・ファイナルとも“ボケ”が進行しており、調整しているそばからドンドン出力低下してゆきました。ご自身で球を交換されるとのことですので、不具合の可能性がある高圧部のカップリングコン交換と、コイルパック調整、ロータリーSW部のメンテナンスなどを実施させて頂きました。Sメーターについては、AGCの基準電圧を出しているDC-DCコンバーター部の平滑コン不良で、こちらは交換しています。ご依頼内容については、全て確認し適宜修理させて頂きましたが、ALC及び、弊社側で確認しました送信出力不具合については、真空管を交換しませんと修理完達できませんため、動画撮影は割愛させて頂きます。
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
【ご依頼内容】
- 受信状況が全バンド極めて悪い
- ALCのかかりが妙に極端
- 25KHzマーカー異常
- Sメーター故障
- その他
以上について修理・作業を承りました。
【工数】
2.5人日
【交換部品】
電解コンデンサー(100μF 16WV)1個
円盤型セラミックコンデンサー(1000pF 2kV、100pF 4kV)各1個
今週は以上の通りです。来週以降も大型案件が続きます。引き続き宜しくお願い致します。“週明け号”は短信版として、羽田空港よりスマホ投稿となります。それでは良い週末をお過ごし下さい。