MX-6S(ピコ6) ご入場 【2016/03/22】
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去る2月6日にトリオOBでミズホ通信創業者の高田継男OM(JA1AMH)がご逝去されました。謹んでお悔やみ申し上げます。実は小生中学生の頃、最初に読んだ電子工作系の書籍が高田OMの書かれた本でした。そして、今回はミズホ通信の往年のベストセラーモデルである、mx-6sの修理依頼であります。

この“ピコシリーズ”にはアマチュア無線の醍醐味が凝縮しています。今回は前回同様、YSWメンバー(というか飲み仲間)のBIB局かお預かりした固体の点検整備です。「キャリア漏れ」があるとのこと。

本機は極めてシンプルな構造故に、調整箇所もごく僅かです。従って、トラッキングと言っても限界があります。まず、ダミーロードにて送信試験を行いましたところ、CW送信状態で確かにキャリアが漏れていることを確認しました。この際に、キーダウン時の出力測定しようと試みたのですが、出力計が全く触れません。MX-6S本体のラジケーターも触れませんし、明らかに異常です。オシロを充てて追いかけたところ、ファイナル手前のR23の測定波形がANT端子の出力波形の3倍以上振れていることが判明しました。ファイナル周辺をくまなくチェックしたところ、ファイナル自体が故障している可能性がたかいものと判断、偶然にも2SC1947をストックしていたので、即交換してみたところ、見事にパワーメーターが振れ始めました。

ここで再びご依頼の「キャリア漏れ」を測定します。耳チェックだけでも盛大にキャリア漏れを確認できます。実際に交信相手には届いていないはずですが、VR5を調整し「漏れ」が最低になるところに調整します。写真のとおり、限界値に押さえ込みました。これでも未だキャリア漏れが聞こえてしまいますが、キーダウン時、無変調時、受信時を同ゲインで測定すると、以下の通りですので、実用上問題無いことがお分かり頂けると思います。
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スプリアス抑制
何とか1W出ていることが確認できたので、一気に細部の微調整に入りました。オーナーのBIBさんのリクエストでスプリアス特性も調べてみることにしました。スペアナをワイドレンジに設定すると、高調波を含め大小様々な不要輻射が現れました。流石にこのままでJARDさんに送っても「×」が付いて戻ってくるでしょう。汗 3逓倍回路、ファイナル周辺のTcを調整して不要輻射のヒゲが短くなるように調整します。写真のとおり、かなりクリーンな電波になりました。この状況で0.8W程度です。小生の自己所有機だと、1.4W程度でているので、ドライバ段、カップリングコンデンサなどの劣化もあるかもしれませんが、大勢に影響ございません。
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その他、2個のVXO水晶が実装されており、Ach:50.150MHz〜50.200MHz、Bch:50.250MHz〜50.300MHzが規定値ですが、25KHz上にズレていました。規定値だと 200KHz〜250KHz にQRVできないことになりますので、意図的にズラされていたのかもしれませんが、オーナー様に確認したところ「覚えなし」ということでしたので、規定値に調整しました。
10分間連続送信の繰り返し、8時間の電源投入を行い、問題はございませんでした。これにてご出場と致します。
このたびはありがとうございました。予想以上に重傷だったようです。お手数をおかけしました。
一度半田付けし直した方がイイかも。
中~後期型はパターンカットとジャンパ追加でキャリア漏れが対策されています。
原因はL9前のSN16913Pの異常動作です。MX-6Sのみ発症します。
無対策だと経年変化でキャリア漏れが再発し、CW連続送信でファイナルが飛びます。