面白い記事を読みました。角川アスキー総研の遠藤諭さんが書いたmugendaiに寄稿されたものです。
「クラウドと日本人のライフスタイル」に於いて、次世代のデジタルライフを語っておられます。
今の若者はオタクが普通」という見出しに目が止まりました。 既に時代は「デジタル・ネイティブ世代」から「ソーシャル・ネイティブ世代」に移行しつつあるようですが、ビット・バレーを牽引した多くのリーダー達を支えたエンジニアの多くが、70年代のHAMブームを体験していたことを思い出しました。2014年現在の年齢でアラフィフ(アラウンド50歳)の人たちです。私もこの世代に属していますが、PC8001やMZシリーズの洗礼を受けた世代とも重なります。

 小生の通った高校に電子工学研究会なるクラブがありました。日本で5番目に認可されたアマチュア無線社団局だそうで、小生は部員ではありませんでしたが部員だった同級生の影響で電話級の免許を取得。サマーキャンプを兼ねた移動運用などにくっついて行き、遊ばせてもらった記憶があります。

 ココに居た部員には、卒業後にメーカーやIT企業に就職した連中も多く、黎明期のインターネットを支えた者もいました。特にミスター・インターネットと呼ばれた村井純先生の下、WIDE研究会(WIDEプロジェクト)の構築に走った連中は正に日本のインターネットを現在の繁栄に導いたと言えます。

 ところが、卒業後20年ほど経って同級生にクラブのコトを聞いたら「もうアマチュア無線をやる学生はいなくなったよ」と言われました。
いつの間にかクラブ活動の主体がアマチュア無線からプログラミングに変わって行ったようです。何を作るにしても制御部分にコンピュータが絡んでくるので、そっちへの興味が高まったのでしょう。実際に無線局免許情報で確認すると、極めて低いアクティビティーである様子が伺えます。物理や化学の事業で習う事象は自ら実験する必要がなく、Wikipediaやブログを見れば何でも情報が得られるし、ICTの未来を探求するほうが面白くなっていたのでしょう。では、半田コテを握って数多の失敗を繰り返すことでモノ作りの面白さを体験していた若者達は、いったい何処へ行ってしまったのでしょう。

少し状況に変化が

 アップルの様に、中も外も一貫して作り上げることでブランディングを成し遂げる手法が、ここ10年のトレンド。その方がパッケージ全体の統一感が生まれます。ハードパッケージ、ソフトパッケージのリリースを同じ物差しで計って世に送り出す手法はジョブスならではの手腕でしょう。そのジョブスが憧れたメーカーはソニーでしたね。平井さんが社長になってからのソニーは「モノ作りに回帰」する路線を鮮明にしました。CESのプレゼンテーションで、平井さんが懐かしいソニー製品のスライドを広げながら「かつて、我々は失敗を繰り返しながらも、コンシューマーに夢と刺激を与え続けてきた」とスピーチしたことは記憶に新しいところ。昨年発売されたXperia Z1シリーズの売上も好調のようです。実際小生も使っていますが、iPhoneを含めた全てのスマホの中でも出色の出来だと評価しています。そこには、今ソニーの持っている技術の全てが集約されていて、例えばカメラ機能に関しては、今まで愛用していたキャノンPowerShot S100の出番を完全に駆逐し、電池性能ではiPhone 5sを完全に凌駕。Hi Resolution Audio技術をフィードバックした音楽プレーヤー、完全にソニーのお家芸である近接通信技術によるNFC/Felicaも搭載、日々の生活には無くてはならない存在になっています。

 因みにカメラ技術は、お家芸の一つであるビデオ・カム事業と旧ミノルタを統合したコンシューマー光学事業という確固たるベースがあります。因みに、ここに搭載されている撮像素子は自社開発のコンパクトデジカメに使われる1/2.3サイズのCMOSセンサー。Android端末ですからOSはGoogle製ということになります。ソニーはメーカーとしての威信を掛けてこの製品を世に送り出しました。小生は”Made in Japan”復活の序章が始まったと感じています。これは自動車業界にも言えること。欧州でスバルやマツダの評価が急速に上昇。マツダのアテンザはヨーロピアン・カー・オブ・ザ・イヤーを受賞。スバルも絶好調で株価も上昇を続け、昨年のテレビCM出稿量(GRP)はトヨタを抜いて業界トップに躍り出ました。

ソーシャル・ネイティブ世代へ

 メディア・マーケティングではソーシャル・ネイティブ世代が注目され始めていて、様々なマーケティング戦略がソーシャルを軸に立案されていることは言うまでもありません。実はココが次世代のモノ作りに大きく影響する部分です。今、ソニーを始めとしたメーカー各社の「やる気」を引っ張っているのはテレビ・ネイティブ世代(1960年〜1977年生まれ)。盛田さんの”Made in Japan”に刺激を受けてモノ作りに恋い焦がれた世代が、家電に、自動車業界に生き残っていたわけです。この世代が引っ張れるのも長くてあと10年程度。次のデジタル・ネイティブ世代(1978年〜1992年生まれ)はモノ作りを知らない世代です。
更にその先のソーシャル・ネイティブ世代(1993年〜生まれ)は言うに及ばず。こういう話をしていると、かつての「ものづくり大学」の失敗を突っ込まれそうですが、もう結果は出ています。日本が元気になる原動力は何なのか・・・。

 以前、教授になった後輩から「今どきの回路実験はPC上のシミュレーションだけで、実装実験など殆どやらなくなった」と聞きました。学生達の多くが、メーカー、通信キャリヤなどに就職するとのことですが、彼らが「机上の空論」だけで製品を開発してしまうことが問題になっているそうです。数年前、アップルがiPhone 4をリリースした直後にとんでもない事件が起きました。「iPhone 4はアルミボディの外枠をアンテナとして利用する構造で、ここに触れながら通信(通話)すると電波の入りが悪くなるので専用のラバー製バンパーを無料で配布する」との告知でした。この問題は株価を揺るがす程のインパクトとなり、アップルはiPhone 4sのリリースを急がざるを得ない状況に。正に「机上の空論」による功罪。実装体験の少ないエンジニアが多くなってきた事の現れでしょう。

アマチュア無線家が教育に参加したら?

 数年前、池田信夫さんがアマチュア無線・無用論を展開されました。PLC推進阻止を訴えるアマチュア無線家に対するアンチテーゼが起源でしたが、1200MHz帯の開放論まで飛び出し彼のブログが炎上したのは記憶に新しいところです。Twitterでの応酬で彼は「アマチュア無線の役目は終わった」と主張しており、現状分析から確かに反論できない部分もありました。しかし、アマチュア無線家のマジョリティーが50歳以上だと言うなら、尚更やらなきゃいかんことがあると思うのです。電波遊びの楽しさを子供たち伝えていくこと。それが出来るのはベテラン・ハムのオジサン達です。
アマチュア無線家は、以前から災害などの場面に於いてボランティアとして活躍してきましたが、教育の場でも貢献できるのではないかと思うのであります。

 遠藤さんの指摘の通り「今の若者はオタクが普通」なんです。筋金入りのオタクであるベテラン・ハムが、ワクワク・ドキドキを創造できるような次世代を育てるなんて素敵じゃありませんか。昨年ハムフェア会場で、グローバル・アンテナ研究会の杵渕OMがループアンテナの特性説明するユニークな公開実験をやっておられました。机の上に固定したループ・アンテナとラバー・ホイップにそれぞれ豆電球を繋ぎ、離れた場所からハンディ機で送信して電球の点灯具合を比較するというものでした。まるで理科の実験のようですが、アマチュア無線のワクワクの源はここにあるのです。
3アマ、4アマの敷居を下げたんですから、小学生を対象に地域のクラブやJARLを中心にアマチュア無線の交信実演や、理科の授業ではできな電波実験や電子工作教室など、できることは沢山あるはずです。

 因みに、かつてソニーの経営陣では井深大(3BB:戦前のコールサイン)さんの影響か、盛田昭夫(JP1DPJ)さん、大賀典雄(JK1SIU)さんも開局されていたそうです。ソニーはアマチュア無線機こそ作ってはいませんでしたが、CBトランシーバーやBCLラジオで電子少年達の心を魅了。エアバンド・ラジオのAIR-7などのニッチな製品を世に送り出す土壌は、モノ作りを楽しむエンジニアや商品プランナーが居たからこそ。久夛良木さんのプレステも、その延長上にあったのです。
そういえば、スティーブ・ジョブスとアップルを立ち上げたスティーブ・ウォズニャックは6歳にしてアマチュア無線の免許を取得したそうです。
今週末にTBS系列でLEDERSというドラマが2夜連続で放送されます。豊田喜一郎さんの国産自動車造りに掛けた生涯をドラマ化したもの。久々にワクワクしています。

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