ローカルのJI1STU局よりIC-780の修理依頼を賜りました。ロータリー・エンコーダーの不具合で「メーカーから修理拒否された個体」とのことでした。確かにアイコムのホームページにある修理受付終了リストには「条件付き修理可能」として記載されているのですが、その条件を満たさなかったということでしょうか?  詳しくは解らないのですが、取り敢えず症状を確認するためJI1STU局を訪問しました。

圧倒的な存在感のフラッグシップ・リグ

2台で50Kgです

 IC-780と言えば「一昔前のアイコムの上位機種」です。重厚な作りに加え、ブラウン管ディスプレイに映し出されるバンドスコープ等、今日の高級機種の先駆けとなったモデル。後のIC-756シリーズよりも一回り大きく、総重量25Kgの巨体は本当の意味でOMキラーです。(汗) IMD-40dBという値は、これだけで玄人を納得させるに十分な性能。IC-780のファイナルはモトローラのMRF422です。当時の高級機種に挙って採用されたこの石は、28vで駆動する「最強にして最後のパワトラ」です。当局所有機のTS-940Sも同じ石を使っています。コレクタ損失280wでIMD=-40dBを誇ります。

 

ロータリー・エンコーダが固まって動かない!

 この症状、アイコムの一昔前のリグに頻発する症状みたいですね。メーカーは修理不可で突き返してきたそうですが「グリースの劣化だけならイケる」と診ました。確かに保守部品としてはディスコン状態なんでしょうけど、エンコーダーを分解清掃するくらいはできそうです。ということで一旦引き上げて後日回収することに。連休最終日の昨日OM宅を再訪問。OMがディスコンパーツ取りバックアップ用に、ジャンクのIC-780も用意してくれました。こちらについては別途触れたいと思いますが、取り敢えず作業優先ということで2台(約50kg)をクルマで回収してきました。

2台のIC-780をピックアップ

姿を表したロータリー・エンコーダ

姿を表したロータリー・エンコーダ

 早速、問題のロータリー・エンコーダの抜き取りにかかります。事前に用意したサービスマニュアル通りに、まずはメインダイヤルのノブを外します。ゴムバンドを外すとノブ本体に六角ネジの穴が見つかります。レンチを突っ込んでネジを緩めます。経年劣化でノブとエンコーダの軸が癒着していました。ノブとフロントパネルの隙間にマイナスドライバーを差し込み、テコの原理でノブを軸から外します。この際フロントパネルが傷つかないように薄い銅板を間には差し入れます。ノブを外すとエンコーダ本体が現れます。エンコーダを固定している4本のビスを外し、ケーブルに気をつけながらエンコーダ本体をフロントパネルの外に引出します。エンコーダの軸を固定している爪付近に付着しているグリースが固まっているのを確認、軸を摘んで回転させようとしても回りません。エンコーダ本体のカバーは簡単に外れます。上部のセンサー基板を止めている2つのビスも外します。(エンコーダ本体はリグから分離)更に軸端の爪を外しますが、コレが中々大変・・。万力でエンコーダ本体を固定し、マイナスドライバを2本使用して爪を押し出します。ワッシャとスプリングを抜き取り、エンコーダのカバーを外すと光学式エンコーダの円盤が現れます。ケース内も古くなって固まったグリースがこびり付いていました。軸端を叩いて円盤ごとケースから抜き取りますが、この際円盤を傷つけないよう配慮が必要です。ケースの円筒内、スプリング、調整板、爪、軸にデグリーサーを吹き付け、劣化したグリースを全て拭き取ります。円筒に差し込んで回転状態を確認したところ、何故かスムースに回りません。樹脂製の円筒がリグ内の高熱に長期間さらされ、歪んでしまっているようです。軸を差し込んだ状態でドライヤーで円筒部分を数分加熱、樹脂の歪を修正しました。加熱の際に軸を回し続けるのがコツです。これで、かなりマシになりました。

新しいグリースを塗布し組み付け

エンコーダの分解写真

エンコーダの分解写真

 ロードバイク用の高級グリースを軸、軸受けに塗布しました。(シマノのプレミアム・グリスを使用)工業用グリスより耐熱、耐摩擦にすぐれています。普通の工業用グリースは温度差に弱く、低温状態で固まってしまう傾向にあります。釣具リール用のグリースでもOK。ただし、塗りすぎには注意してください! 逆順で組付けを行います。光学センサーは、円盤がセンサー部分の隙間に挟まるように取り付けます。エンコーダ本体が組み上がった状態で軸を摘んで回転させてみます。この際、スムースに回転する位置に調整板のネジを回します。軸が前後にブレないことを確認しリグ本体に取付ます。ノブの軸受け内部も金属スラッジを綿棒で掃除してからエンコーダに取り付けます。経年劣化で樹脂部分が歪んでしまうと、抜き差しがスムースに行えなくなりますので、この際キレイにしておきましょう。

IC-780完全復活!

 メインダイヤルが、高級機に相応しい「重めのスムースな回転」を取り戻しました。部品取り用に用意した「もう一台のIC-780」と比較し、問題の無いことを確認・・・。送受信の異常は見られないようなので回路系の調整は省略、修理完了としました。それにしても、この程度の修理がメーカーで出来ないというのは???です。小生は初めてIC-780をいじりましたが、修理時間は正味2時間程度です。ケンウッド・サービスは20年前のリグを半年かけてフル・レストアしてくれるのですが・・・。「ディスコンになったファイナルを代替部品で交換などは対応不可・・」などなら分かるのですが、個別パーツの分解清掃ぐらいなら対応してくれても良さそうなものです。「アッセンブルの知識しかなく、デバイス固有の構造を熟知していないのでは????」と疑いたくもなります。

ロードバイク用の高級グリースを塗布

組付けが終わったエンコーダ本体

ジャンクの個体について・・・

 こちらは出力が安定しません。メータの表示もメチャクチャ。ドライバ段、ファイナル段はマッチング・トランスによる整合なので調整のしようがなく、その手前のトラッキング・エラーか、ドライバ、ファイナルの劣化が考えられます。幸いにもMRF422をストックしているので交換は可能。蓋を開けて中を見るとシャーシ全体が錆び付いていました。コレはかなり重症かもしれませんね〜〜〜。ユニットごと分解して再利用も考えましたが基板も相当傷んでいそうです。

Tagged with →  

コメントを残す